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八ッ場ダム計画変更案(第5回)に関する都知事への質問 その質問に対する回答

資料室 142kb

2016年9月23日。「東京の水連絡会」が東京都知事宛に提出した質問書に対する
文書回答が、2016年10月18日に届きました。 この回答について、問題点を「回答」に付記しました。

回答
28都市政広第522号
平成28年10月18日
東京の水連絡会 代表 遠藤保男様

東京都
都市整備局都市づくり政策部 水資源・建設副産物担当課長
建設局河川部計画課長 水道局総務部施設計画課長

都庁81kb

八ッ場ダム計画変更案(第5回)に関する質問について(回答)

平素より、東京都の事業にご理解とご協力をいただき誠にありがとうございます。
さて、平成28年9月23日に、提出いただいた標記の質問について、別紙の通り、回答致します。


問題点
東京都知事に宛てた質問であるが、知事からの回答ではない。東京都知事自身が決裁した文書であることの証明を回答書に何らかの形でつけるよう事務担当者に求めたが、この回答には都知事本人からの回答であることを示す記載がありません。

質問A: 今回の計画変更(案)提示の手続きについて

質問1 八ッ場ダム事業は前回2013年の第4回計画変更時、更なる増額要因を数多く抱えていましたが、計画変更は工期延長のみで、事業費の増額は盛り込まれませんでした。 「総事業費について変更しなければならない情報が得られていない」としたにもかかわらず、今回、720億円にもなる大幅増額案が発表されたのはまことに不可解です。
2013年当時、総事業費の今後の動向について、関東地方整備局からどのような説明を受けたのかを明らかにしてください。
さらに、その後、今回の計画変更案発表まで、関東地方整備局から総事業費の変更に関わることについて、どのような情報が示されてきたのかを明らかにして下さい。


回答
2013年当時、国からは、現時点で改めて事業費を精査した結果、総事業費は変更しないこととし、今後、実際の施工等に当たり、事業全体におけるコスト縮減により対応するこ とを基本として、総事業費以内の完成を目指して最大限の努力をする、と聞いています。
 今回の計画変更案発表まで、国から総事業費の変更に関わることについて、どのような情報 が示されてきたのかについては、関係1都5県が作成した「八ッ場ダム建設事業費の変更に係る調査報告書』(都市整備局ホームページに掲載)をご覧ください。
(http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/topics/h28/topi029.html )

問題点
 国の説明に対して質問をした経過があることは認められるが、その説明の真偽に関する調査が されていないまま、了承している。これでは、「国の言うがまま」で、納税者である都民に対 してあまりにも無責任でしょう。
 少なくとも、知事の言う「都民ファースト」から遠く離れていると思います。

質問2 2013年の計画変更の発表は、同年8月6日に行われました。2013年の「現地調査報告書」によれば、関東地方整備局は記者発表に先立つ6月7日、「工程について精査中」と関係都県に説明し、さらに7月5日に「工期を4年延長」することを関係都県に説明し、7月10日には関係都県の合同職員チームが現地調査を行っています。
今回の記者発表についても前回と同様、事前に関東地方整備局から各都県への説明、各都県の現地調査があったと考えられますが、今回、関東地方整備局と各都県との間で行われた事前のやり取りの経緯をすべて明らかにして下さい。


回答 
関係1都5県が作成した「八ッ場ダム建設事業費の変更に係る調査報告書」をご覧ください。

質問3 これまでの計画変更時と同様、今回もすでに関係都県の合同職員チームが現地調査を行い、報告書をまとめているのであれば、その報告書を明らかにして下さい。

回答
都市整備局ホームページに報告書を掲載しています。

質問4  八ッ場ダムは計画変更を繰り返しており、更なる増額、工期延長の可能性があります。今回の計画変更案に際して、国交省の説明と現地案内のみでは判断材料が乏しいと考えますが、都として、今回の増額要因について独自に分析するなど、客観的な情報の収集はあるのかを明らかにして下さい。

回答
今回の基本計画の変更については、都は、関係5県と合同調査を行い、書面調査と現地調査により、増額内容、増額理由、金額の妥当性について確認しており、その他の分析等は特に行っていません。

 問題点
ダム本体建設現場の地盤の状況などは本体工事進捗によって明らかになることが多い。 ダム本体が完成してから湛水することによる地下水位の変動で誘発される湖岸周囲の地滑りに ついての真摯な検証が行われていない。
 豊富かつ貴重な遺跡の調査域が現在知られている範囲に限定されている。 調査結果として現地保存という選択肢がなくなってしまう。

質問5 2013年の計画変更の直後、12月9日の関東地方整備局の事業評価監視委員会の配布資料によれば、関係都県は八ッ場ダムについての意見聴取で「事業費の圧縮」、「コスト縮減」を要望しています(資料1)。 更なる事業費増額は到底認められない、という姿勢であることが読み取れますが、それならば、今回の事業費の大幅再増額案を各都県は到底容認できないと考えられます。 このことについて見解を明らかにして下さい。

回答
国は、事業が終盤を迎え、事業の詳細な内容が概ね確定したことから、想定し得る事業費の増要因を考慮し、事業費の精査を行いました。その結果、コスト縮減の工夫をしてもなお、2013年の計画変更以降の状況変化により、事業費を増額する必要が生じたため、その内容を1都5県に示しました。
都は、関係5県と合同で事業費増額について検証を行い、国から示された増額の内容、理由、妥当性などを確認し、やむを得ないものと判断しました。


問題点
事業進捗によって次々と新たな問題が生じるのは、事前の調査では予測できないことがあることを 証している。 「やむを得ないものと判断」とするのであれば、今後も建設工事の進捗、湛水試験による影響、稼働後の水位変動による影響等、八ッ場ダム事業で危惧される多くの事態に陥った場合を想定しての検証が不可能であることを意味している。

八ッ場ダム 75kb

質問B: 今回の計画変更(案)の内容について

質問1  関係都県の求めるコスト縮減の結果、地すべり等を防止するための安全対策の対象箇所が5か所も減らされています。いずれも、代替地またはその近辺です。代替地を始めとする地元住民の居住地の安全性が強く懸念されています。
八ッ場ダム問題に60年間も苦しめられてきた皆さんを安全性に対する不安で更に苦しめ続けることになります。このことについて見解を明らかにして下さい。

回答
事業者である国は、地すべり対策に関する新しい技術指針に基づき、専門家の意見を聴きながら、従来 よりも精度の高い調査検討を進めた結果、対策箇所を確定したとしています。
都としては、1都5県による合同調査の中で、地すべり対策の安全性確保については、国において適切に 対応されることを確認しています。


問題点
「国において適切に対応」の内容を明らかにしてほしい。
地すべり等の生じる恐れが予知されたとき、あるいは実際に地すべり等が生じた場合、その対応策に 要する費用はアロケーションに応じて負担割合が決められると思われるが、知事はどのように認識して いるのでしょうか。
 代替地を始めとする地元住民の居住地の安全性が強く懸念されることが否定できないのであれば、それ を引き起こさない対策を用意する必要がある。どのような対策が考えられるのか示してもらいたい。
 八ッ場ダム問題に60年間も苦しめられてきた皆さんを安全性に対する不安で更に苦しめ続けることは 許されない。ダムができあがったとしても、この事態を回避するには、貯水しないことしか防止策はな いと考えますが、見解を示していただきたい。

質問2 八ッ場ダム本体工事の基礎岩盤に除去が必要な弱層部が想定より深かったことが明らかとなり、従来から心配されてきたダムサイト地質の脆弱性が問題になっており、その解明が必要であると考えられます。 このことについて見解を明らかにして下さい。

回答

都としては、1都5県による合同調査の中で、ダム基礎部の安全性確保については、国において適切に 対応されていることを確認しています。

問題点
「国において適切に対応」の内容を明らかにされたい。
ダムサイト工事で問題が生じた場合、その対応策に要する費用はアロケーションに応じて負担割合が 決められると思われるが、知事の認識を問いたい。

質問3 地すべり対策の追加や東京電力(株)水力発電所への減電補償、代替地造成費の負担などによって、更なる事業費増額が予想されます。このことについて見解を明らかにして下さい

回答東京電力(株)水力発電所への減電補償、代替地造成費の負担などについては、国において、引き続き、 適切に行うこととしています。

 問題点
「国において適切に行う」の内容を明らかにされたい。
 これらの問題が生じた場合、その対応に要する費用はアロケーションに応じて負担割合が決められると思われるが、知事はどのように認識しているのか?

質問4 本体工事の遅れや地すべり対策の追加などにより、八ッ場ダム建設事業の工期の更なる延長の可能性が高いと考えられます。このことについて見解を明らかにして下さい。

回答
国は、今回の基本計画の変更に際して、平成31年度完了に向けた工程の精査を行っていると聞いています。都としては、引き続き、国に対して、工期の厳守はもとよりコスト縮減と一日も早い完成を強く求めていきます。

 問題点
「工期の更なる延長はない」ということではありませんね。確認を願いたい。「工期の厳守はもとよりコスト縮減と一日も早い完成を強く求めていきます」ということ自体が、八ッ場ダムが抱えている諸問題を直視して抜本的対策を考え、実践することの阻害要因になっている。知事の見解を求めます。

質問5 東京電力(株)松谷発電所は水利権の更新により、河川維持流量の放流が義務付けられ、ダム建設の目的の一つ、「吾妻川の流量維持」(2.4m3/秒)が喪失します。「吾妻川の流量維持」に関して、計画変更で取り上げられていません。このことについて見解を明らかにして下さい。

回答
吾妻川の流量維持に関して、事業者である国において、引き続き、適切に行うこととしています。

問題点
「引き続き、適切に行う」の具体的内容を示されたい。
 ダム建設の目的の一つ、「吾妻川の流量維持」(2.4㎡/秒)が喪失したならば、それに見合うダム湖容量の縮小につながるはずである。知事の認識を示してください。

質問C: 東京都としての問題

質問1 東京都の水需要は1992年度以降、減少傾向が続き、2007年度からの年間一日最大配水量は500万3/日を下回り、2014年度は465万m3/日に過ぎません。 東京都の人口は2020年度をピークに減少すると予想されていること、節水システムがより普及することから、今後の水需要が上昇傾向に転ずることは考えられません。
一方、東京都水道の保有水源は地下水源を加えるなど正しく評価すると約700万m3/日もあり、一日最大配水量を200万m3/日以上も超えています(資料6)。八ッ場ダム完成時点が延びることでこの傾向は益々強くなります。
  このような状況の中で、八ッ場ダムに対して水源開発のための費用負担をする必要が今もあるのでしょうか。見解を明らかにしてください。


回答
・現時点における、将来の水道需要の見通しについては、平成27年9月の最高裁で確定した八ッ場ダムの住民訴訟判決において も、合理性を認められています。
・また、都の主要な水源である利根川水系では、近年3年に1回程度の渇水が発生しています。加えて、気候変動の 進行により、 更に厳しい渇水の発生が懸念されています。
・国によれば八ッ場ダムが完成していれば、今夏の取水制限はまったく必要なかったとしており、八ッ場ダムは渇水に対して大きな 効果を有しています。
・首都東京の安定給水のためには、八ッ場ダムは極めて重要であり、必要不可欠です。


問題点
「住民訴訟判決においても、合理性を認められています」とあるが、そのような事実はない。この記述の削除を求めます。 削除しないのであれば、上記記述の出典を明らかにしてほしい。
「近年3年に1回程度の渇水が発生しています」とあるが、ここでいう「渇水」の定義を明示されたい。
 本年5月から7月にかけて、利根川上流部ダム群の貯水量が低下し、取水制限があったが、それは残雪が少ないことを考慮せずにダムから多量に送水したことに起因していることを私たちは指摘してきた。すなわち、ダム運営上のミス、という人為的渇水です。「気候変動の進行により、更に厳しい渇水の発生が懸念されています。」とあるが、その事実があるならば、その出典を明らかにしてほしい。 あわせて、そのような事実があるとした場合、八ッ場ダムの有無で状況がどのように変るのかを具体的に明らかにされたい。
「国によれば八ッ場ダムが完成していれば、今夏の取水制限はまったく必要なかったとしており」とあるが、その出典と、その情報を信頼する貴殿の根拠を示していただきたい。
「八ッ場ダムは渇水に対して大きな効果を有しています。」としているが、そのような状況を実際に想定した具体的なシミュレーションを示してほしい。
「首都東京の安定給水のためには、八ッ場ダムは極めて重要であり、必要不可欠です。」としているが、当方がこの質問で指摘した事項について、貴殿の認否を求めたい。その認否には科学的根拠を付すよう求めます。

質問2 東京都は治水上、河川法63条に基づき、八ッ場ダムにより「著しい利益」を受けるとされていますが、ダムによる洪水の削減効果は下流に行くほど減衰していきます。江戸川では、八斗島地点に比べ効果が10分の1になることを国交省が認めています。戦後を代表する8洪水の八斗島地点への到達流量を17,000m3/秒に引き伸ばしたうえでの、人ッ場ダムによる効果を示しています。
東京都の江戸川地点では八斗島地点での削減効果の十分の一しかないことが国交省の分析で明らかです。このように、東京都が「著しい利益」を受けるとされていることに大きな疑義があります。東京都はこの「著しい利益」をどのように認識しているのでしょうか。 見解を明らかにしてください。


回答
・利根川の浸水想定区域は東京都を含む首都圏に大きく広がっており、ひとたび利根川で大きな洪水が発生し、 堤防が決壊した 場合には、都内でも甚大な被害が予想されています。
・平成25年に策定された「利根川・江戸川河川整備計画」では、利根川の洪水調節機能を担う施設として八ッ場ダムが位置付けら れています。
・この八ッ場ダムは、利根川上流の流域面積の約四分の一を占める吾妾川流域に初めて建設される多目的ダムであり、その洪水 調節容量は利根川上流ダム群では最大で、既存六ダム全体の約六割に相当します。完成すれば利根川上流の三流域すべてに ダムが整備されることとなり、既存ダム群と相まって様々な降雨に対して洪水調節を行うことが可能になります。
・これにより、利根川全川にわたって洪水時の水位を低下させ、堤防決壊のリスクを軽減することができるようになり、東京都を含 む首都圏全体の洪水被害の危険性を低滅することができます。
・こうした治水上の利益をもたらす八ッ場ダムは、都にとっても必要不可欠な施設です。


問題点
「ひとたび利根川で大きな洪水が発生し、堤防が決壊した場合には、都内でも甚大な被害が予想されています。」 とあるが、堤防が決壊するとするのであれば、どのような洪水でどこが決壊するのか示してほしい。
 あわせて、その場合、八ッ場ダムによる効果を(八ッ場ダムがあることによる水位低下量)を示されたい。「ひとたび利根川で大きな洪水が発生し、堤防が決壊した場合」とあるが、そのような洪水において八ッ場ダムが果たす効果は極めて小さい。「ひとたび利根川で大きな洪水が発生し、堤防が決壊した場合」を想定して東京都が用意している対処策を明らかにしてください。
 ダムによる削減効果は距離が離れるほど削減する。国交省のデータがあります。 この事実を知ってもなお、ダムによる治水が有効と考えるのでしょうか?
「利根川全川にわたって洪水時の水位を低下させ、堤防決壊のリスクを軽減することができるようになり、」とある。上流にダムがあっても下流部で大氾濫被害が生じたのが昨年の鬼怒川氾濫である。この氾濫地域の河道整備は大きく遅れ、脆弱な堤防の破堤と無堤防地区からの越流が鬼怒川大氾濫被害を引き起こした。極めて効果が少ないダム依存治水ではなく、遙かに効果が高く、実効性がすぐに現れる耐越流堤防の整備を最優先することを求めます。
 知事の見解を示していただきたい。

(東京都の回答に関する連絡先)
都市整備局都市づくり政策部
水資源・建設副産物担当課長古澤正彦
電話03-5388-3230

以上が、「東京の水連絡会」から都知事への質問と東京都からの回答です。   

2017・9・13 記                                    

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東京都は水道水のほぼ60%を利根川水系・荒川水系に依存しています。
つまり、自給率はほぼ40%。こんな自給率で異常気象や大地震が引き起こす
災害に備えることが出来るのでしょか。
私たちは大変に危うい水行政の元で暮らしています。
これまで東京の河川・地下水の保全と有効利用をめざしてきた市民グループ、
首都圏のダム問題に取り組んできた市民グループらが結束して、
「東京の水連絡会」を設立しました。
私たちは身近な水源を大切にし、都民のための水行政を東京都に求めると同時に、
私たちの力でより良い改革を実践していきます。
東京の水環境を良くしようと考えている皆さま、私たちと共に歩み始めましょう。
2016年9月24日。        
                         

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