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 八ッ場(やんば)ダム計画変更に5回目のお墨付き。 これでいいのでしょうか? 

<都の議事堂136kb
(写真は東京都都議会 議事堂)

賛成107、反対20。2016年10月13日東京都議会本会議で、
八ッ場ダムの計画変更案が可決しました。その顛末です
 

「あまりにも無責任だ!」たまりかねた傍聴席の5人衆から、ついヤジが飛びだし、
都市整備委員会室から退席を命じられてしまいました。
10月6日、なぜか蒸し暑い日のことでした。ことの始まりは2か月前に遡ります。
 八ッ場ダム(やんばダム)の事業費を4600億円から5320億円に、720億円も増額する
基本計画変更案を、国交省関東地方整備局が昨年8月に発表しました。増額は2度目、
工期延長を含む基本計画の変更は5度目になります。
1986年度に策定された基本計画では事業費2110億円、それが今回、5320億円と2.3倍に
膨れ上がっています。 (*5回の基本計画変更の表は本文下欄に)
 国交省は計画変更のたびに、これ以上の工期延長はない、事業費増額はないと約束しながら、それを平気で反故にして新たな計画変更を繰り返してきました。受益者の東京都と群馬、埼玉、茨城、栃木、千葉県も、お題目のように「早期完成・コスト縮減を求める」と注文をつけながら, それをズルズルと認め続けてきました。
 築地(豊洲への移転問題)で手いっぱいの小池都知事は、八ッ場ダム問題を理解する時間もなく前例を踏襲。今回の計画変更に「やむを得ないものとして同意する」という議案を9月議会に提出。
 今回の事業費改定により、東京都の負担は約635億円から約734億円へ、99億円増えることになります。
 八ッ場ダム問題への取り組みは、「東京の水連絡会」の重要なテーマの一つです。
私たちは自民・公明以外の主な都議会会派を回り、問題点を説明し、請願の紹介議員になってくださるようお願いしました。

生活者ネットA30kb
(議事堂内にある会派別の部屋)

 問題点とは、ダム建設現場の土壌がもろく地すべりの危険があること、それは水没予定地の住民の移転先(ダム湖岸の代替え地)にも及ぶこと、また受益者である東京都の水道水はすでに余っていることなどです(*請願要旨にまとめた7つの問題点は本文下欄に掲載、請願全文は資料室に所収
 7つの問題から、次の2項目を請願として提出しました。

『請願項目』

1.八ッ場ダムの建設に関する基本計画の変更(第 5 回)について、詳細に審議して
  ください。
2.東京都議会として、八ッ場ダム基本計画の変更案に同意しないでください。

 
現在小池与党に転じている会派の中には「八ッ場ダムには反対だった」「築地と同じだね」と話す議員さんもいました。しかし、紹介議員を引き受けてくださったのは結局、共産党の白石たみおさん、徳留道信さん、生活者ネットの山内れい子さんの3名だけでした。
民進党でお話できた議員さんは「計画変更に反対したい」と明確な意思をお持ちでしたが、会派全体としてその方向でまとまれなかったのは残念です。
 さて、10月6日の都市整備委員会で八ッ場ダム計画変更の議案と私たちの提出した請願が審議され、10月7日に採決されました。
 自民党も公明党もほとんど質問せず、民進党他も2、3質問した後に「国がコスト縮減に努めることを確認したという都の説明を確認した」などと言って、7日には議案に賛成してしまいました。

共産党30kb

 一方、共産党の白石たみお議員は地すべり、代替地整備費用、治水、利水にまで踏み込んで質問を展開し、都市整備局のお役人が言いよどんで、自民党から「自信持って答弁しろよ」とヤジられる場面もありました。
都市整備局職員は国から受けた説明を繰返すのみで、白石さんが「東京都として独自に検証したうえで納得したのか」と念を押したところ、なんと、「(八ッ場ダム事業は)国の責任。都としては国からの説明をきくだけ。 それ以上のことは(現地で行った1都5県合同調査の)調査対象にしていない」との回答です。
 「あまりにも無責任だ!」と傍聴していた仲間の一人が意思表明したところ、私たち全員が退席を命じられる事態となりました。
不本意にも白石さんの質問を中断することになってしまい、後ほど謝罪しましたが、白石さんも「あんなひどい答弁は初めてだ」と憤っていました。
 都市整備委員会に所属議員のいない生活者ネットワークは、10月13日の本会議で小松久子議員が八ッ場ダム反対の論陣を張りましたが、与党席からすごいヤジが飛びました。 築地のウップンを八ッ場で晴らしているんでしょうか?
 結局、東京都議会本会議では、賛成107名、反対20名(共産党17名、生活者ネット3名)で八ッ場ダムの計画変更案が可決されました。
 私たちは、9月23日付で「八ッ場ダム計画変更案(第5回)に関する質問」を小池知事あてに提出し、問題点を知らしめた上で見解を質していますが、回答は従来の都市整備局の見解そのままでした。    (*小池知事への質問と回答は資料室に掲載します)
 
2014年5・5重機126kb
(2014年4月、吾妻渓谷に重機が入った。)

今は築地とオリンピック一色の都議会ですが、地滑りの危険を抱え、コストも膨らみ工期も延びるのが確実な八ッ場は、次の時限爆弾とも言えるものです。
都市整備局や水道局、賛成票を投じた都議会与野党各派、全員がわかっていながら八ッ場ダムの底なし沼へずぶずぶ沈んでいくように見えます。
 小池都知事も官僚任せにしている場合ではありません。巻き込まれるのは都民であり、国民、そして何より、コスト縮減とか言って安全対策を削られた、地すべり地帯に住む代替地の住民なのです。
 嘘と無責任が次の修羅場を着々と準備しているように思えてなりません。私たちは小池都知事が八ッ場ダム問題の実態を理解されるよう、これからも働きかけを続けていきます。
                        
                         2017・2・10 記 深澤洋子                              

~過去5回の八ッ場ダム基本計画変更~

1986年度策定 事業費2110億円、工期2000年度まで
2001年度  第1回変更   工期延長    2010年度まで
2004年度  第2回変更   事業費増額   4600億円へ
2008年度  第3回変更   工期延長    2015年度まで
2013年度  第4回変更   工期延長    2019年度まで
2016年度  第5回変更案  事業費増額案  5320億円

 ~八ッ場ダムの建設に関する基本計画の変更(第 5 回)についての請願~
『要旨』

八ッ場ダム事業は四度の計画変更により、工期 2019 年度、事業費 4,600 億円となっています。
東京都を含む関係都県は、これ以上の計画変更は認められないと意見表明してきましたが、国土交通省関東地方整備局はさる 8 月 12 日、事業費を 5,320 億円に再増額する五回目の計画変更案を提示しました。更に東京都知事はこの提示を受入れるとし、貴議会への同意を求めています。
 貴議会には、この計画変更案について、計画変更案自体の問題と、受益者である東京都の受益内容の問題の二つの視点から慎重審議をする必要があります。

ホテルゆうあい裏の緑162kb
(旧ホテル「ゆうあい」の部屋から見えた、水没予定地・我妻渓谷の緑。)

計画変更案に関する5つの問題

①  関係都県の求めるコスト縮減の結果、地すべり等を防止するための安全対策の対象箇所が5か所も減らされ、代替地を始めとする地元住民の居住地の安全性が強く懸念されます。
②  八ッ場ダム本体工事の基礎岩盤において、除去を必要とする弱層部は想定より深かったことが明らかとなりました。 従来から心配されてきたダムサイト地質の脆弱性が問題になっており、その解明が必要です。
③  地すべり対策の追加や東京電力㈱水力発電所への*減電補償などによって、更なる事業費増額が予想されます。 (*減電補償とは、ダムのために発電に必要な水量が減少、それによって生じる発電量の低下を補う補償金)
④  本体工事の遅れや地すべり対策の追加などにより、八ッ場ダム建設事業の工期の更なる延長の可能性が高いと予想されます。
⑤  東京電力㈱松谷発電所の水利権更新により、ダム建設の目的の一つ、「吾妻川の*流量維持」が喪失します。「吾妻川の流量維持」に関して、計画変更で取り上げられていないことから、その解明が必要です。(*流量維持とは、この場合はダム建設後の吾妻川の流れを一定以上に維持する水量)

東京都の受益に関する2つの問題

①  東京都の水需要は1993年から減少が続き、2007年度からの年間一日最大配水量は500万m3を下回り、2014年度は465万m3に過ぎません。東京都の人口は2020年頃をピークに減少すると予想されていること、節水システムがより普及することから、今後の水需要が上昇傾向に転ずることは考えられません。
 一方、東京水道の保有水源は地下水源など、水道局が算入していない水源を含めると1日最大配水量700万m3もあり、実際の配水量を200万m3以上も多く保有しています。八ッ場ダムの完成が延びることでこの傾向はますます強くなります。
②  東京都は治水上、八ッ場ダムにより「著しい利益」を受けるとされていますが、ダムによる洪水の削減効果は下流に行く
ほど少なくなります。江戸川では、八斗島(やったじま・群馬県伊勢崎市八斗島)地点に比べ効果が10分の1になることを国交省が認めています。
 東京都が「著しい利益」を受けとされていることに大きな疑義があります
                      
 2017・2・10 記 深澤洋子

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東京都は水道水のほぼ60%を利根川水系・荒川水系に依存しています。
つまり、自給率はほぼ40%。こんな自給率で異常気象や大地震が引き起こす
災害に備えることが出来るのでしょか。
私たちは大変に危うい水行政の元で暮らしています。
これまで東京の河川・地下水の保全と有効利用をめざしてきた市民グループ、
首都圏のダム問題に取り組んできた市民グループらが結束して、
「東京の水連絡会」を設立しました。
私たちは身近な水源を大切にし、都民のための水行政を東京都に求めると同時に、
私たちの力でより良い改革を実践していきます。
東京の水環境を良くしようと考えている皆さま、私たちと共に歩み始めましょう。
2016年9月24日。        
                         

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