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講演会 PFAS 問題(水汚染)を追って―沖縄と多摩―

 この報告書は、小平・環境の会会報「環音(わおん)」No.942023.5.31発行)より、

加筆訂正の上で転載しました。

 
 講演会 PFAS 問題(水汚染)を追って沖縄と多摩 開催しました!
はじめに

 有機フッ素化合物(PFOA, PFOSなど5000種類以上あり、総称PFAS)はフライパンや防水スプレー、化粧品、半導体など「台所から宇宙まで」と言われるほど広く便利に使われていますが、その地下水汚染が、沖縄、東京多摩、大阪など各地で広がっていることがわかってきました。そこで私たちは沖縄の基地問題に取り組んでいる市民グループ、〈辺野古問題を考える小平市民の会〉、〈「語やびら沖縄」もあい練馬〉と共にPFAS汚染問題を考える会」を作り、20233 25 (土)夜、国分寺のcocobunji プラザリオンホールで上記の講演会を開催しました。参加者は予想を大きく超えて会場超満員の約160人、さらにオンライン参加も約80人となりました。

 

会場148kb



登壇者3人からの報告

最初に短いドキュメンタリーを上映して沖縄のPFAS問題の全体像をつかんでもらい、次に沖縄出身の(あきら)有希子さんが、「基地のそばで暮らすということ」というテーマでお話しされました。

米軍機からの落下物が娘の保育園に落ちるという経験をした明さんは、PFAS問題でも米軍の好き放題が繰り返されていることを訴えました。PFASを含む消化剤が巨大な泡となって基地外に流出した事故、米軍が汚染水を一方的に下水に放出し、保管していた残りの汚染水はなぜか日本の税金で焼却処分されたこと。最後に、47都道府県を1クラスに例えるなら「沖縄さんが33個のランドセルを持たされているのと同じだ」とイラストで基地負担の現実を明示されました。

 

次に登壇した根木山幸夫さんは、多摩地域住民に広く血液検査を呼びかけ、一気にこの問題への関心を高めた「多摩地域の有機フッ素化合物(PFAS)汚染を明らかにする会」の共同代表、事務局です。昔から地下水を大事にしてきた多摩地域で水道水に使われていた井戸水の汚染が発覚、東京都は2019年、3カ所の浄水所で井戸水の取水を停止して河川水に切り替え、PFAS濃度が管理目標値(50ng/L)以下になったから安全だと発表した、しかし同時に2011年から目標値の2、3倍汚染された水を住民が飲み続けていたことがわかり、それで血液検査に取り組むことになったとのことです。

検査は昨年11月から20自治体の18会場で650人が受け、米基準に照らすと最初に結果が出た87人の85%に健康被害の恐れがあることがわかりました。

汚染源については、2000年頃からの多摩川の水質検査で半導体工場や自動車製造工場の排水から高濃度のPFASが検出されたことから、東京都は横田基地もありうるとしつつ、汚染源はわからないとしています。だから基地への立入検査は求めない、調査結果は発表するが対策は取らないということになっているのです。根木山さんは土壌・地下水の汚染は、横田基地で繰り返し行われた泡消化剤による飛行機の消火訓練で、PFASの成分が空中に飛散、地面に浸透した結果ではないかと指摘しました。そして最後に、血中濃度が高い人への医療的ケア、浄化槽で地下水の汚染を除去すること、土壌のボーリング調査で汚染源を明らかにすることを求めました。

 

3人目の諸永裕司さんは以前、朝日新聞の特別報道部に所属し、沖縄の基地に関心を持っていたが、日米地位協定を取り上げたくても難しくて理解してもらえない、そこで沖縄で報道されていた米軍基地のPFAS汚染とその理不尽な後始末に注目、横田基地でも沖縄と同じことが起こっているのではないかと水問題を追い始めたそうです。

まず、分解されにくく蓄積されやすい「永遠の化学物質」と言われるPFASの性質、それから下の模式図で汚染のメカニズムを解説されました。



②イラスト模式図61kb    

 

 

諸永さんが満員の会場に「国分寺の方、手を上げて」と言うと大勢の手が上がりました。続けて諸永さんは「国分寺は日本一のホットスポット、最も汚された地域です、知らされずに飲まされてきた、そのことにまず怒っていただきたい」と呼びかけました。

取水停止前、国分寺の東恋ヶ窪浄水所(小平市上水本町5、6丁目にも配水)は地下水100%でしたが、血液検査の結果、国分寺市民65人の血中濃度の平均は全国の3倍以上、94%の人がPFASの米基準20ng/mlを超えていたのです。実は2003年に多摩川の水の汚染がわかってから、東京都は飲み水の濃度を非公表のまま測り続け、2019年には密かに浄水所の取水を停止していたのですが、それは諸永さんの入念な調査でわかったことでした(平凡社新書『消された水汚染』参照)。しかし少し報道はあったものの大きな問題とはならなかった、それは報じなかったメディアの責任が重い、基地の存在に翻弄されてきた沖縄で母親たちがすでに声を上げていたのに比べ、明らかに温度差があったといいます。

 

アメリカでは国防総省がPFASタスクフォースを立ち上げ、汚染施設の土壌を浄化、周辺住民にミネラルウォーターを配ったり浄水施設を作ったりしているのに対し、沖縄では日本に金を出させて基地の飲み水を浄化し、県が基地内の調査をすることも一向に認めません。なぜなら、日米地位協定では「汚染が現に発生している時」しか調査できない、つまり消火訓練を中止する前の過去の汚染は調べられないからです。そこには汚染者が責任を負わなくていい、汚染された側が税金を使ってその尻拭いをし、しかも汚れた水を飲まされるという、いびつな日米関係があると指摘されました。

一方で水の指紋ともいうべきヘクサダイヤグラムを調べると、横田基地から流れる地下水の下流にあたる立川、国立、国分寺はほぼ同形なのに対し、小平、清瀬、稲城、小金井はそれぞれに違っているので工場など別の汚染源も考えられるそうで、一筋縄ではいかない問題です。

 

2023年末にもアメリカではPFOA, PFOSを共に4ng/Lとする規制値(従来は勧告値で合計70ng/L)が決まる見通しで、EUPFAS全体を使用禁止にしようと動いているが、日本はただ傍観し後追いするしかない、まるで空洞、それは判断するデータを持たない、(血液中の化学物質濃度を測る)バイオモニタリングを実施していないからということでした(環境省はお金がないので100人規模の調査しかできていない)。みんなでバイオモニタリング制度が必要との声を上げ、一方で汚れた水を飲ませ続けた責任のある行政が、自ら汚染地域の健康調査もすべきと提言されました。

沖縄では下水汚泥が肥料として再利用され、農産物を通してPFASが体内に戻る食物連鎖が起こっている疑いがあるとのことで、土壌の基準を作って再汚染を止めること、また、基地への立ち入り調査などで汚染源を特定して汚染を除去することも、まとめに掲げられました。

 

 

主な質疑応答

 

JPG諸永さん67kb 

 (諸永裕司さん)



<諸永さん> 健康への影響は?
 PFASの半減期は4、5年。摂津市でダイキン工場により汚染された井戸水を撒いて野菜を作り食べていた男性は血中濃度が非常に高かったが、野菜作りをやめると1年か半年で急激に血中濃度が低下した。

 飲用井戸の規制は? 民間の飲用井戸や専用水道は水道法の枠外。行政は所有者に危険性をきちんと伝えるべき。

消防大学校(調布市)で消火訓練しているが? アメリカでは消防士の健康問題が浮上しているが、日本の検診ではPFASを調べていない。大学校近くの井戸で高濃度のPFOAが出ているので情報公開請求している。 沖縄の行政の対応は? 水道水源を基地と関係ない所に変え、国の基準がなくても全県の土壌調査を始めた。 自衛隊の泡消火剤は? パイプに充填してあり、使用禁止後も、国内10カ所でしか焼却できずコストもかかるので廃棄できない。他の有効な消火剤も見つからず困っている。民間駐車場も同じ状況。

 

JPG明さん96kb

 (明 有希子さん)



<明さん>  
米軍基地の汚染水はどのように処分? 日本が九州に運び焼却処分した。

日常の飲料水はどうしているか? 沖縄は硬水で飲みにくいので軟水器や浄水器が普及し水を買うことも多い。ただ、自分の娘が低体重児で生まれたのは、学校などで生の水を摂っていたせいかもしれない。

 

<根木山さん> 血液検査の最終結果は? 5月初めか半ばに最終報告の予定(現状、5月15日に650人中551人の結果を公表)。

 血中濃度が高い人の健康相談は? アメリカでは20ng/mlを超えた人は精密検査をした方がいいとしている。立川のクリニックを中心に、未検査の人にも応じられるよう相談窓口を準備している。

 フッ素樹脂加工のフライパンの安全性は? 剥がれないよう慎重に扱う。心配ならフッ素フリーのフライパンを。(諸永さん補足:PFAS400度ぐらいにならないと溶けないので、すぐに危険ということはない)

浄水器の効果は? 血液検査の結果では、浄水器を使っている人は相対的に血中濃度が低かった。ただし1年か1年半で効力がなくなるので注意。(諸永さん補足:効果が認められているのは活性炭の浄水器のみ)

 農作物への影響は? 多摩では都市農業が盛んで地場野菜を給食でも積極的に取り入れているが、防災用井戸で高濃度のところがあり、その水が畑に撒かれることもある。井戸水、土壌、作物の検査をしっかりやるべきだ 

周囲の反応の変化は? 毎日問い合わせがある。実際にPFASで病気になったという人は沖縄でも本土でもいないが、薄い濃度でも発達毒性があり、子供や妊婦にどのような影響があるかよく考えないといけない。

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 参加者が多すぎて資料が足りないなどスタッフはバタバタでしたが、アンケートでは「大変充実した内容だった」と好評をいただきました。開催して本当に良かったと思いました。なお、講演の録画はレイバーネットのHPで観ることができます。
  https://www.youtube.com/watch?v=LDXda6my6rI



PFAS汚染問題を考える会」は今後もこの問題に取り組んでいきたいと考えています。

小平環境の会・共同代表 深澤洋子

 

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プロフィール

Tokyo no Mizu

Author:Tokyo no Mizu
プロフィル

東京都は水道水のほぼ60%を利根川水系・荒川水系に依存しています。
つまり、自給率はほぼ40%。こんな自給率で異常気象や大地震が引き起こす
災害に備えることが出来るのでしょか。
私たちは大変に危うい水行政の元で暮らしています。
これまで東京の河川・地下水の保全と有効利用をめざしてきた市民グループ、
首都圏のダム問題に取り組んできた市民グループらが結束して、
「東京の水連絡会」を設立しました。
私たちは身近な水源を大切にし、都民のための水行政を東京都に求めると同時に、
私たちの力でより良い改革を実践していきます。
東京の水環境を良くしようと考えている皆さま、私たちと共に歩み始めましょう。
2016年9月24日。        
                   
      

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