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水道民営化に反対します

東京の水連絡会は水道民営化に反対します

「水道法の1部を改正する法律案」いわゆる「水道民営化法案」は2017年に閣議決定され、第196国会において2018年6月29日より衆議院厚生労働委員会において審議が始まり、たった8時間の審議で衆議院を通過。参議院に送られ継続審議となりました。
そして現在、第197回臨時国会の参議院で審議されています。

この改正法は人口減少による水需要の減少や設備の老朽化に対応するために、各自治体の水道事業を一つに束ねる広域化や水道事業の運営を民間企業へゆだねることで乗り切ろうというものです。
水の需要は人口減や節水機器の普及で2000年をピークに減少し、すでに約30%の事業体で費用が収入を上回る原価割れが起き、職員数も30年前に比べ、ほぼ30%も減少しています。
また、水道管の老朽化が進んでおり、法定耐用年数の40年を超える水道管は、15年度末の全国平均で約14%を占めています。
こうした課題に応えるために水道事業の基盤強化が必要だとして打ち出されたのが、今回の改正案です。
しかし、事業の広域化と官民連携という名の民営化で基盤強化が可能なのでしょうか。私たちは否と考えます。
東京の水連絡会は以下にあげる3つの理由でこの改正法に反対します。

東京の水連絡会が水道民営化に反対する3つの理由

まず反対する大前提として次のことを挙げておきます。
水道を企業が扱う「商品」にしてはいけません。
水道水は、水道法2条に「国民の日常生活に直結し、その健康を守るために欠くことのできないもの」とある通り、命を守る国民共通の大切な公共財です。
水道民営化とは水道水を商品化することです。商品には利潤の追求がつきまといます。水道水が利潤追求の対象になってはいけません。
鉄道や航空の民営化は市場での競争原理が働きますが、水道は1つの地域を独占します。消費者にはA社よりB社が良いという選択肢がありません。供給を独占した企業は水道料金を容易に値上げできます。
公共財である水道水を一企業の利潤追求の商品にしてはいけません。

反対の理由その1 水道民営化で世界の都市が辛酸を舐めました 

海外では民営化で料金が高騰したり水質が悪化したりして、いったん民営化した水道事業を公営に戻す事例が相次いでいます。オランダのトランスナショナル研究所が2017年6月に発表した調査では、世界の267の自治体が上下水道事業を再公営化しています。
東京の水連絡会でも、アメリカの都市アトランタ、南米アルゼンチンの首都ブエノスアレス、アジアではインドネシアの首都ジャカルタにおける民営化から再公営化にいたる経緯を検証してきました。当ブログで「水道民営化で世界の都市が舐めた辛酸」を参照してください。http://tokyo924mizu.blog.fc2.com/blog-entry-41.html

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再公営化した267の自治体のなかにはドイツのベルリン、フランスのパリも入っています。パリ市は2010年に企業から運営権を市民が取り戻しました。いずれの自治体も日本がこれから推し進めようとしているコンセッション方式(施設は公有、運営は民間企業。)での民営化でした。
そもそも世界の水道民営化は、1979年に発足したイギリスのサッチャー政権が新自由主義政策の元に始めた国有企業の民営化が始まりでした。そのイギリスでさえ、2017年に労働党が水道事業を再公営化することをマニフェストに掲げ、80%の国民から支持を得ているそうです。
世界の水メジャー(上下水道事業を世界規模で展開する大企業)は日本の法案改正を恰好のビジネスチャンスと捉え、狙いを定めていることでしょう。ただし水メジャーや多国籍企業にとってマーケットとして魅力があるのは、人口50万人以上の政令都市です。1400ある自治体の内、8割は給水人口が5万人以下ですが、これらの自治体からは利潤を見込めないためにターゲットとならないでしょう。  
とにかく、日本は世界がすでに折り返したルートを周回遅れでこれから走り出そうとしているのです。

反対の理由その2 民営化された事業体では災害時の対応が危うい

職員数が減少している水道事業です。民営化されればぎりぎりまで人員削減されるのは世界の例をみれば明らかです。民営化で運営権を手に入れた企業が利潤を上げるために、世界でとられてきた方法は次の3つです。
1:水道料金の値上げ、2:人員削減、3:施設の保全管理のネグレクト。
今現在、水道設備の耐震化率は4割弱にとどまります。2018年6月の大阪府北部地震では、断水が多発しました。京都市内でも大規模な濁水などが発生し、耐震化の重要性が改めて浮き彫りになっています。            
「施設の老朽化対策」としての民営化ですが、利益を上げなければ成り立たない民間企業にとっては耐震補強や施設更新などは二の次となり、結局なおざりにされてしまう恐れがあります。まさに「利益は民間へ、リスクは行政へ」となりがちです。

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(大阪府北部地震で水道管が破裂して道路陥没。時事ドットコムニュースより)

現在、各自治体は災害時の相互応援協定を結んでいます。被災地の要請に応じて応急給水や復旧支援を行う仕組みを持っています。東日本大震災においても全国の自治体が結集して素早く対応しました。
コンセッション方式は、運営権を民営化しても、水道事業政策決定者は自治体にあります。相互応援協定は自治体間で結ぶので協定は維持されるという楽観論もあります。
はたしてそうでしょうか。民間事業者が余震の続く危険な災害地に使命感を抱いて復旧作業に駆けつけるでしょうか、しかも人員を削減されてぎりぎりでまわしている現場です。とても今までの協定通り連携できるとは思えません。 
災害の多い日本でこの法案は誠に危険です。

反対の理由その3 情報が隠蔽され市民の監視ができなくなります

民間企業には市民参加を受け入れたり、情報をオープンにする義務はありません。何の手立てもなくコンセッション契約を交わすと、水質管理や設備点検をどのように行っているのかなどがありのままに公開されることはないでしょう。経営の収支のバランスはどうか、利益配分で株主にいくら払ったか、役員の報酬がどうか、内部留保がいくらあるのかなどを正直に公開するはずもありません。
つまりわたしたちが企業の運営を監視することができなくなる恐れが大きいのです。公的事業なら納税者として、市民には議会を通して説明を求め情報の公開を求める権利があります。
この点について、国会の審議で政府は「これは自治体と運営権獲得業者との契約の問題になります。契約をしっかりすれば、監視がおろそかになることはありえない。水質に関してもモニタリングを自治体が第3者機関を通しておこなうなどすれば心配にあたらない」と答弁しています。
しかしこの答弁はあまりにも世界の実情に疎いと云うほかありません。残念ながら世界の都市も日本の自治体も、水道事業に直接携わらなくなってしまえば、水道事業そのものを知るすべをなくしてしまいます。
契約を巧妙に破ってしまうのは水メジャーが世界で展開した手口をみれば明らかです。
いったん運営権を手放してしまったら、モニタリングは大変難しくなります。あらゆることは民間企業の手の内に移ってしまうのです。
以上が水道民営化法案に反対する3つの主な理由です。

もっとも大切なことは 水道事業に市民が参加できる制度の確立です

日本は水道普及率がほぼ100%、いままでこれが当たり前と思っていましたが、人口が減少しているなかでこれが当たり前ではなくなっていきます。設備の縮小も含めた水道施設の維持や運営管理について市民が参加していかなければ解決できない問題が数多く浮上してきます。
本来、地域が抱える課題は、地域の人たちで話し合って決めることがベストです。例えば限界集落の水道設備をどこまで維持していくのか。
広域化と民営化で簡単に解決できる問題ではありません。地域の人々の合意形成がはかられる場所と制度を、これから時間をかけて確立していかなければならないでしょう。
 
パリ市の歩みが、ひとつのヒントになります。
2010年にパリ市が水メジャーから運営権を取り戻した時に創った運用体は公共事業体的な性格が強い「オー・ド・パリ」(パリ水道)という組織です。

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(アン・ル・ストラさん。前パリ市副市長・前オードパリ代表。2018・2・18東京永田町で開催されたシンポジウム「未来の水と公共サービス」での講演写真)

オー・ド・パリの取締役会は、パリ市議会から選ばれた議員、社員代表、市民社会代表、環境問題関連の有識者、研究者や企業管理者などから構成されています。
そのなかに「パリ水道オブザーバー」という水道事業に関する議論と情報公開の場が設けられました。ここにはオー・ド・パリの幹部、水道利用者、研究者、労働組合、環境団体など、パリ市民の誰もが参加できます。そこで財政を含めた情報はすべてオープンにされて討論されます。そしてこのパリ水道オブザーバーの代表がオー・ド・パリの理事会にも議席を持ち、政策関与しているそうです。
こうした民主的なプロセスを取り入れることで、「オー・ド・パリ」の経営の健全化が担保されているとのことです。
このパリ市の水道事業の運営形態は参考に値する1つのモデルではないでしょうか。 

いずれにしても、これからの水道事業は各自治体の能力が試される時代です。自治体の能力は、市民参加できる制度を私たちが作れるかどうかにかかっています。その市民参加の道を閉ざしてしまうのが、現在政府が推し進めようとしている民営化にほかなりません。
私たちは民営化に反対します
 さらに、市民からの指摘を無視して無駄な事業への過剰投資にうつつを抜かし、施設老朽化対策をさぼってきた水道行政の改革、少子化・過疎化対策を放置してきた行政の改革に私たちは取組んで行きます。


              2018・11・15 東京の水連絡会



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プロフィール

Tokyo no Mizu

Author:Tokyo no Mizu
プロフィル

東京都は水道水のほぼ60%を利根川水系・荒川水系に依存しています。
つまり、自給率はほぼ40%。こんな自給率で異常気象や大地震が引き起こす
災害に備えることが出来るのでしょか。
私たちは大変に危うい水行政の元で暮らしています。
これまで東京の河川・地下水の保全と有効利用をめざしてきた市民グループ、
首都圏のダム問題に取り組んできた市民グループらが結束して、
「東京の水連絡会」を設立しました。
私たちは身近な水源を大切にし、都民のための水行政を東京都に求めると同時に、
私たちの力でより良い改革を実践していきます。
東京の水環境を良くしようと考えている皆さま、私たちと共に歩み始めましょう。
2016年9月24日。        
                   
      

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