水の月刊ニュース News On Water
- 2019/10/04
- 12:10

水の月刊ニュースNEWs On Water10月号は、2019年9月1日から30日までに起きた水に関するニュースをまとめたものです。(ニュースは新聞記事やテレビ報道を要約していますが、記事の趣旨を損なわないようにしています)
「ダムはいらない」訴え 反対の市民団体が集会 長崎市

(写真は石木ダム建設に反対を訴え、長崎市内を歩く集会の参加者たち)
石木ダム事業に反対する三つの市民団体でつくる「石木ダム・強制収用を許さない県民集会実行委員会」が7日、長崎市の市立図書館で集会を開いた。予定地の川棚町川原(こうばる)地区の住民を含む約150人が「ふるさとを壊すダムはいらない」と訴えた。
集会では市民団体の一つ「いしきを学ぶ会」の森下浩史さん(72)が代表し、「基本的人権や個人の財産権を無視した不条理な強制収用には反対だ」とあいさつし、県民の関心を高める必要性を強調。住民も支援を求めた。
19日には住民と中村法道知事の面会が予定され、住民の一人として臨む同町議の炭谷猛さん(68)は「自分たちの地域に残って生活していくことを、知事に言い続ける」と語気を強めた。
西日本新聞長崎・佐世保版 9月8日
水道「みやぎ方式」に批判や懸念 市民から声 仙台で討論会
水道3事業の運営を一括して民間に委ねる県の「みやぎ型管理運営方式」を巡り、市民団体「命の水を守る市民ネットワークみやぎ」は7日、仙台市青葉区の市戦災復興記念館で学習討論会を開いた。

(宮城県は水道民営化で、20年後に120億円のコスト削減となると試算)
市民ら約80人が参加。県企業局の実施方針素案について、県議が説明し「水利用の減少という課題があることは事実だが、賛否どちらにしても時間をかけて議論すべきだ」と指摘した。
市民団体事務局の小川静治氏は「県は水道民営化という表現を否定するが、(運営権を売却する)仕組みは仙台空港と同じ。公営のまま事業費を削減した事例を学ぶべきだ」と批判した。
討論会では「制度が県民に十分伝わっていない」「(県が9月末まで実施している)意見公募で懸念を伝えよう」などの声があった。
なお、市民団体「命の水を守る市民ネットワーク・みやぎ」は先月27日、県民への説明が足りないとして、導入に向けた関連条例案提出を見送るように県へ要望書を提出しています。
河北新報 9月8日
諫早湾干拓 最高裁 国勝訴の2審取り消し 審理やり直し命じる

長崎県諫早湾の干拓事業をめぐり、排水門の開門を命じた確定判決を無効とするよう国が求めたことについて、最高裁判所は判決で国の訴えを認めた2審の判決を取り消し、福岡高等裁判所で審理をやり直すよう命じました。判決では開門の是非には触れず、司法での争いが続くことになりました。
諫早湾の干拓事業では、平成9年に国が堤防を閉めきったあと、漁業者が起こした裁判で開門を命じる判決が確定した一方、農業者が起こした別の裁判では開門を禁止する決定や判決が出されました。
司法の判断が相反するなか、国は、開門を命じた確定判決の効力をなくすよう求める裁判を起こし、去年7月、2審の福岡高等裁判所は、「漁業者の漁業権はすでに消滅している」として、国の訴えを認め、確定判決を事実上、無効とする判決を出し、漁業者側が上告していました。
これについて、最高裁判所第2小法廷の菅野博之裁判長は判決で、「漁業権が一度消滅しても開門を求める権利は認められると理解すべきだ」などと指摘して国の訴えを認めた2審の判決を取り消し、福岡高裁で審理をやり直すよう命じました。判決では開門の是非には触れず、司法での争いが続くことになりました。
NHKニュース 9月13日
「水メジャー」を目指すと就任あいさつ 東京水道サービスの野田数社長

(写真は野田 数社長)
官民連携や民営化が叫ばれている中、5月に社長に就任した東京水道サービスの野田数さん(46)は日本版の「水メジャー(巨大企業)」を目指すとの“大志”を明らかにした。
―ヴェオリアやスエズなど海外の水メジャーは強い。伍(ご)してやっていけるか?
「これまでも海外展開はしており、途上国への支援事業的な取り組みが多かった。海外事業に豊富な経験を持つ水道関連企業と、情報の共有を行いながら途上国以外も検討していきたい」
-都の「団体」から脱却するのか?
「それはない。都民への水の安定供給に取り組むのが私たちの役目だ。東京都はいわゆる水道民営化を予定していない。私たちは都からの受託事業を主体としつつ、自主事業として国内外の水道事業体への貢献を行っていく。」
-都の職員の天下り機関との批判もあるが、プロパー(生え抜き)社員の底上げは
「プロパー社員の待遇改善を行っている。具体的には、昇進に要する期間を短縮し、初任給を上げ、プロパー社員の給与の底上げを図る。都の職員OBは高度な技術を持っているので、都からの受託事業の幅を広げ、プロパーへの技術継承を推進する」
のだ・かずさ 東京都東村山市出身。平成9年、衆議院議員時代の小池百合子氏の秘書。平成15年の都議選で当選。28年に小池知事の特別秘書に任命され、29年「都民ファーストの会」の代表に就任。31年3月に特別秘書を退任し5月から現職。
産経新聞 9月13日
八ツ場ダム 10月上旬に試験湛水

(本年度中の完成に向け10月上旬に試験湛水が始まる八ツ場ダム。7月17日撮影)
本年度中の完成を控える八ツ場ダム(群馬県長野原町)の建設事業で、ダムに水をためる試験湛水(たんすい)を国土交通省が10月上旬に始める予定であることが13日、分かった。約半年間かけて水位を上下させ、ダム本体や貯水池周辺などの安全性を確認する。70年近く地域を翻弄してきたダム建設事業が、完成に向けて大詰めを迎える。
試験湛水では、ダム堤体内の排水路のゲートを下げ、吾妻川の流れをせき止める。ダム湖の水位を常時満水位(583メートル)まで上昇させた後に1日1メートルのペースで水を抜き、最低水位(536.3メートル)まで降下させる。傾斜計や地下水位計などの計器を設置して異変を察知し、地滑りが確認された場合は湛水を止める。
大滝ダム(奈良県)や滝沢ダム(埼玉県)など、試験湛水中に地滑りが発生し計画が遅れたダムもある。
八ツ場ダムについては、市民グループや超党派の国会議員らが地滑りなどの対策に問題があると指摘し、国に詳細な説明を求めている。
上毛新聞 9月14日
石木ダム 全用地収用 住民「古里、奪わないで」

長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、反対住民13世帯の宅地を含む全未買収地が19日、土地収用法に基づく「権利取得の時期」を迎えた。
約5年ぶりに実現した中村法道知事との面会には、水没予定地の川原(こうばる)地区で暮らす13世帯約50人のほとんどが参加。小学生から90代までの約20人がそれぞれの言葉で古里への思いを語った。高ぶる感情をのみ込みながら思いの丈をぶつける住民に対し、知事は目を落とし、淡々とメモを取る姿が目立った。
「気持ちは伝わってるのか」。交わらない視線に象徴されるような県との深い隔たりに、住民たちはいら立ちを募らせた。
3人の子どもを育てる炭谷潤一さん(38)は「県は理解を得る努力をするといいながら、手続き上は強制的に土地を取り上げている。私の家族と川原の人々を全力で守る」と語気を強めた。小学3年生の長女、沙桜(さお)さん(8)が「お家がなくなったらいやです。ダムを造らないでください」と涙ながらに訴えると、周囲からすすり泣きがもれた。
知事は質問に答える以外はほぼ発言しなかったが「佐世保市の水不足は解消されていない」と事業への理解を求めた。「膝を交えてお話しする機会が持てるならありがたい」と今後の面会にも含みを持たせた。
長崎新聞 9月20日
「史上最悪」の不漁、船は遠洋へ出た サンマ漁船転覆


(写真は慶栄丸と同じ30トン級のサンマ漁船)
北海道根室市の納沙布岬沖で17日にサンマ棒受け網漁船「第65慶栄丸」(29トン)が転覆した事故は、例年のサンマ漁なら出漁しない遠くの海域で起きた。「史上最悪」とも呼ばれる今季のサンマ不漁の影響で、漁師たちは魚影を求めて遠洋に出漁を迫られている。
転覆した慶栄丸には北海道在住の男性8人が乗船。操舵(そうだ)室から船長の敬礼寿広さん(52)が心肺停止の状態で見つかり、21日に死亡が確認された。残りの7人は行方不明となっている。第1管区海上保安本部は21日、7人は発見できなかったとして捜索を終了した。
慶栄丸は今季4回目の出漁だった。1、2回目は例年通り北方四島周辺に出たが漁獲なし。3回目は日本の排他的経済水域外の公海まで出漁したが、ほぼ漁獲はなく、今回も3昼夜をかけて公海を目指した。
転覆場所は、納沙布岬の東方沖約610キロの公海上。帰路だったことから、関係者は「1千キロぐらい先に行っていたのでは」と指摘する。所属する大樹漁協(北海道大樹町)は「沿岸にいないとなると、魚を追いかけて行かざるを得ないこともある」と話す。
朝日新聞 9月19日
リニア9キロの壁 静岡知事が工事認めず
JR東海のリニア中央新幹線の建設計画が遅れ、2027年の東京―名古屋間の開業に黄信号がともっている。環境問題を理由に静岡県内での着工に川勝平太知事が反対しているためだ。

焦点となっているのが静岡工区だ。リニア建設の最大の難所とされる南アルプストンネルの一部で、唯一、現時点でも未着工だ。静岡工区の工期満了は26年11月の予定だったが、すでに着工は2年遅れだ。
着工に入れないのは、川勝氏がリニア着工のゴーサインを出さないためだ。川勝氏はトンネルを通すことで大井川の源流・南アルプスの地下水が流れ出し、本来は大井川水系に流れる河川流量が減少する懸念があることを問題視する。大井川は、かつて水力発電所の建設を巡って地元住民が「水返せ運動」を起こした歴史もあり、静岡にとって敏感なテーマだ。
リニア着工を川勝氏が認めないのは大井川だけが理由ではないとの見方もある。沿線自治体の関係者は「経済的メリットが薄く、地元の理解を得づらいのも事実」と指摘する。リニア沿線7都県のうち、静岡県には唯一新駅が造られず、波及効果は期待薄だ。
日本経済新聞 9月27日
*カバー写真は、最上小国川のダム工事現場下流の渓谷。