台風19号の被害甚大 News On Water 11月号
- 2019/11/07
- 12:53

水の月刊ニュースNEWs On Water1Ⅰ月号は、2019年10月12日の台風19号関連のニュースをまとめたものです。(ニュースは新聞記事やテレビ報道を要約していますが、記事の趣旨を損なわないようにしています)
台風19号の被害甚大
試験湛水を始めたばかりの八ッ場ダム、台風19号で一気に満水
読売新聞 10月13日 13時22分配信

(写真は満水に近づいた八ッ場ダム。13日午後0時半頃、群馬県長野原町で)
国が来春の運用開始を目指し、10月1日に貯水試験を始めた八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の水位が、台風19号による大雨で急上昇した。国土交通省関東地方整備局の速報によると、13日午前5時現在の水位は標高5573・2メートルとなり、満水時の水位(標高583メートル)まで10メートルほどに迫った。台風によるダムの被害は確認されていない。
八ッ場ダムでは、周辺の斜面の安全性を確かめる試験湛水(たんすい)が始まっている。国交省は、最高水位に達するまで「3~4か月かかる」とみていたが、周辺では11日未明から13日朝までに累計347ミリの雨が降り、山間部から流れ込んだ水でダム湖の水位は約54メートルも上昇した。水没予定地に残された鉄橋も11日時点では見えていたが、完全に水の底に沈んだ。
満水時の水位に近づいたことから、国交省は「今後は水位維持の操作に移る」としている。 読売新聞 10月13日 13時22分配信
台風19号接近!
避難勧告40万人超で「江戸川区」がツィッターでトレンド入り
J-CASTニュース 10月12日 15時29分

(上の図は江戸川区の冊子ハザードマップの表紙)
台風19号の接近に伴い、東京都江戸川区の一部に避難勧告が出されたことが、インターネット上で話題だ。ツイッターではトレンド上位10位圏内に「江戸川区」が入り、注目を集めている。
江戸川区は10月12日9時45分、区内の一部地域に避難勧告を出した。各社報道によると、対象となるのは約42~43万人。避難所が順次開設され、区公式サイトの「避難所の開設について」で随時更新が続けられている。15時時点で、対象地区は以下の通り。
【区役所区民課管内】
中央1丁目から4丁目、松島1丁目から4丁目、松江1丁目から7丁目、東小松川1丁目から4丁目、西小松川町・・・以下略。 J-CASTニュース 10月12日 15時29分
浸水「車も家も、もうだめだ」 宮城・栃木・茨城で被害
朝日コム 10月13日 21時20分

(写真はボートで救助に向かう陸上自衛隊員13日午前、宮城県丸森町)
宮城県丸森町では、阿武隈(あぶくま)川の増水で、中心部が水に覆われた。水位は道路標識の高さに達し、流された車が道路をふさぐ。まるで茶色くにごった湖のような光景に一夜で変貌(へんぼう)し、避難者が立ち尽くしていた。
町内の男性(78)は12日午後4時ごろ、軽乗用車で役場に避難した。その車も水没。自宅周辺は1階まで浸水していると聞いた。「一晩明かせば大丈夫と思ったが、こんなことになるなんて。車も家ももうだめだ」
県は、住宅が浸水被害などを受けた人に、東日本大震災の被災者向けの
災害公営(復興)住宅の空き室に入居してもらう検討を始めた。
栃木県佐野市では12日午後8時50分ごろ、秋山川の赤坂町堤防が決壊した。一帯が浸水し、住宅の一部が孤立状態になった。一人暮らしの福地マツ子さん(71)は13日未明、災害情報を告げるアラームで目を覚ました。「それからあっという間に水かさが増して、畳が浮いて、こたつもひっくり返ってしまった。生きた心地がしなかった」。一睡もせずに夜を明かし救出された。
水戸市でも市内を流れる那珂川や支流で水があふれ、多くの住宅が浸水した。自衛隊や警察、消防がヘリやボートで約130人を救助した。 同市の公務員男性(46)は午前6時ごろ、「ゴー」と水が流れる音で目が覚めた。「台風15号で被害がなかったので大丈夫だろう」と思っていたが、1階の天井辺りまで水はせり上がり、消防のボートで救助された。「命だけあって良かった」と話した。 朝日コム 10月13日 21時20分
緊急放流の決断、その時何が 影響大、最後は「やろう」
朝日新聞10月14日。08時19分

(写真は体育館に避難した人たち。10月12日午後6時5分、神奈川県厚木市水引の市立厚木中学校。)
相模川上流部の城山ダム(相模原市緑区)で、貯水量の急増による決壊を防ぐための緊急放流を12日午後9時半から13日午前1時15分にかけて実施した。 放流に伴う下流域での大規模水害は起きなかったが、課題も浮かんだ。
県は気象庁の雨量データなどを踏まえ、12日の午後1時過ぎに緊急放流を「午後5時開始」と知らせたうえで、それを公表。 だが雨量が刻々と変わり、県発表の時刻は午後5時から10時、更に9時半ところころと変更。
県の担当者は「難しい判断を迫られたが、最後は『(緊急放流を)やろう』とまとまった」と語った。
ダムの下流の厚木市は緊急放流による水害を懸念し、緊迫した対応を続けた。 12日午後1時半に、相模川の近くに住む市民に避難指示を発令。同9時前に「10時に緊急放流」の情報が入ると、職員が川沿いの家々を回り、避難を呼びかけた。緊急放流が30分繰り上がって始まったのは、そのさなかだった。
緊迫度を高める別の要因もあった。市中心部付近で相模川に合流する中津川の上流にある国管理の宮ケ瀬ダムでも緊急放流という情報が12日午後9時ごろ入ったからだ。結局、実施されなかったが、緊急放流が重なれば危険はさらに増していた。
小林常良市長は取材に「ダム管理者と下流域の自治体間には、もっと密接な事前調整が必要だ」と語った。下流域の平塚市災害対策課の担当者は「緊急放流をしなければならないときは、タイミングと方法を慎重に検討し適切に行ってほしい、というしかない」と話した。 朝日新聞10月14日。08時19分
堤防決壊が同時多発。 越水で浸食か、地元は補強要望。
台風19号で明らかになる日本の治水対策
朝日新聞 10月16日05時00分

✖は堤防決壊の場所
台風19号は、東日本の広い範囲で堤防決壊が同時多発的に起こる「未曽有の事態」をもたらした。
約9・5平方キロに及ぶ大きな浸水被害をもたらした長野市穂保の千曲川の堤防決壊現場。 決壊したのは千曲川左岸の約70メートルの区間。堤防が残っている隣接部も、数10メートルにわたって堤防の外側が深くえぐられ、茶色い土がむき出しになっていた。

一般的に、堤防から水があふれると、流れ落ちた勢いで堤防の外側が浸食される。内側から水がしみこんで堤防が弱くなっているところに、外側からも崩れ、決壊に至る。千曲川では今回、水が堤防を越えて流れ出る様子が国交省のカメラに記録されていた。
決壊地点の下流約5キロでは川幅が急に狭くなり、上流約8キロでは犀川が合流する。一帯は古くから洪水の「常襲地帯」とされ、記録に残る最大規模の寛保2年(1742年)の洪水でも同じエリアが浸水した。川幅などが決壊に影響したかについては、委員会で調べ、対策を検討するという。
宮城県大郷町を流れる1級河川・吉田川では、地元の人が以前から危険性を指摘していた所が決壊した。
13日午前7時50分、同町粕川地区で吉田川左岸の堤防が決壊し、約100メートルにわたって消失。あふれだした泥水は計139世帯が住む地区を襲い、取り残された住民35人がヘリで救出された。決壊した堤防はその前後より50センチ~1メートルほど低く、幅も狭かった。
大郷町では1986年8月の豪雨でも吉田川の堤防が決壊するなど、過去も被害が出ている。町は国交省に繰り返し治水強化を要望し、この場所も「危険箇所」とみていた。同省は最近になって堤防に土嚢(どのう)を積む対策をとっていた。
完成済み堤防7割
堤防はダムとともに河川の氾濫(はんらん)を防ぐための治水の要だ。
国内には3万5千以上の河川がある。国土交通省はこうした河川のうち、約1万3400キロの区間で堤防整備計画を立てているが、完成済みなのは約9100キロと予定の約7割にとどまっている。
2018年7月の西日本豪雨や、同年9月の台風21号の記録的な大雨などを受け、政府は同年12月、約7兆円規模の「国土強靱(きょうじん)化のための3か年緊急対策」を閣議決定。防災や減災に向けたインフラ整備を強化し、今年度当初予算でも治水関係の事業費として約1兆1500億円を計上した。
国交省などは全国の堤防の危険箇所の緊急点検を実施。決壊が起きた時に大きな被害が生じる恐れがある約120河川の堤防について、20年度にかけて、堤防のかさ上げや河川と反対側にあるのり面の補強、水はけをよくするための工事を行っている。ただ、国が管理する約70河川のうち19年度中に工事が完了する見通しなのは、15河川にとどまっている。 朝日新聞10月16日05時00分
八ッ場ダム「治水効果」確認 自民幹事長視察 市民「冷静な議論を」
毎日新聞・群馬版 10月18日

(写真は国土交通省八ッ場ダム工事事務所長の説明を聞く自民党の二階俊博幹事長(左から2番目)ら。群馬県長野原町の八ッ場ダムで)
自民党の二階俊博幹事長が17日、台風19号に伴う記録的豪雨で予定より3カ月以上早く最高水位に到達した八ッ場ダム(長野原町)を視察し、同ダムの「治水効果」を確認した。二階氏は記者団に「今回の台風でダムが一定の効果を果たし、地元の皆さんの安心に役立った」と評価してみせた。
今月1日に水をため始めた同ダムは、台風の大雨で15日午後6時に最高水位(標高583メートル)に到達。本格運用前で堆積(たいせき)土砂もないままの「まっさら」の状態のダムは本来の洪水調整容量上限を1000万立方メートルも上回る約7500万立方メートルの水をためたという。二階氏に同行した山本一太知事は、県として今回の台風でダムが発揮した実際の治水効果を検証する考えを示した。
一方、長年、同ダムの建設に反対してきた「八ッ場あしたの会」は、伊勢崎市や埼玉県内の利根川に国交省が設置した水量計の数値と同ダムの貯水量を比較したところ、川の氾濫を防ぐほどの効果はなかったと指摘。事務局の渡辺さんは「客観的な数値を無視して政治的立場からダムを礼賛するのは危険だ」と訴えた。
毎日新聞・群馬版年10月18
合意難航…50年以上、無堤防状態 多摩川氾濫の東京・二子玉川
産経新聞 10月25日

(台風19号の影響で、浸水した多摩川沿いの歯科医院。14日午後、東京都世田谷区玉川)
台風19号で多摩川水系では4カ所で浸水被害が起きた。そのうちの一ヶ所は二子玉川の無堤防地域で起きた。
この無堤防地域の整備計画は、まず最低限の高さの暫定的な堤防(暫定堤)を築いた後、住民(景観を大事にする)と交渉を続けてより防災性の高い正規の堤防に再整備する2段階方式で進められていた。
2014年には、無堤防の約1キロのうち、地盤が低く水害の危険性が高い下流側の約600メートルに暫定堤が完成。残りの無堤防区間でも今年6月、住民から暫定堤への同意が大枠で得られ、堤防の設計に着手したところだった。ただ、暫定堤は14.5メートル前後の最低限のもので、過去の記録を踏まえると越水の恐れがあるため、国は16メートル前後の正規の堤防が必要と訴える。しかし、正規の堤防を整備するには家屋の移転などが必要となる。整備計画は一連の事業を遅くとも13年からの30年間で終えるとしているが、完了時期は見通せないのが実情。
東洋大の及川康教授(災害社会工学)は「河川付近の住民は自覚的に情報を収集し、氾濫が起きうる場所で暮らすという『覚悟』を求められるようになるだろう。行政は被災リスクを分かりやすく提示し、住民との丁寧なコミュニケーションを行っていくほかない」と話している。 産経新聞 10月25日2014年には、無堤防の約1キロのうち、地盤が低く水害の危険性が高い下流側の約600メートルに暫定堤が完成。残りの無堤防区間でも今年6月、住民から暫定堤への同意が大枠で得られ、堤防の設計に着手したところだった。ただ、暫定堤は14.5メートル前後の最低限のもので、過去の記録を踏まえると越水の恐れがあるため、国は16メートル前後の正規の堤防が必要と訴える。しかし、正規の堤防を整備するには家屋の移転などが必要となる。整備計画は一連の事業を遅くとも13年からの30年間で終えるとしているが、完了時期は見通せないのが実情。
決壊河川、半数で浸水想定図なく 1千万円超の費用壁に
朝日コム 11月3日
台風19号で堤防が決壊した71河川のうち半数の36河川で、洪水で水につかるおそれがある地域を示す「浸水想定区域図」が作られていなかった。いずれも県が管理する中小規模の河川で、浸水想定の対象になっていなかった。
水害への備えを定めた水防法では、河川を管理する国や都道府県に対して流域面積が広く水位が上がれば氾濫などで大きな被害が出るおそれがある河川を指定し、浸水想定区域図を作るよう義務づけている。
流域に市街地や重要施設がある大規模な河川が優先されることが多く、市町村はこれをもとに避難所や避難ルートの情報を加え、住民向けの「ハザードマップ」を作っている。
朝日新聞が、国土交通省と台風19号で決壊が起きた7っの県へ取材したところ、計71河川のうち約50・7%にあたる5県の36河川で、浸水想定区域図が作られていなかった。町役場周辺が大規模に浸水した宮城県丸森町では、決壊した新川、内川、五福谷川の3河川すべてで浸水想定区域図がなかった。

(写真は台風19号で浸水した丸森町)
宮城県の担当者は「義務となっている大規模な河川の浸水想定作業を優先した」。浸水想定には1河川で半年以上の時間と、1千万円以上の費用が必要になることが多いといい、「中小河川にも広げたいが、人手と財源との兼ね合いもあり悩ましい」と話す。 朝日コム 11月3日
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台風19号それに続く21号で被災された皆さまに心からお見舞い申し上げます。
地球温暖化で大雨災害が今後ますます増加するとみられています。河川の氾濫危険地域の堤防強化が何より急がれますが、川のエネルギー(洪水)をダムと堤防だけですべて抑え込むことは困難です。流域全体で川のエネルギーを受けとめ・治める流域治水が今後大事になってくるでしょう。
なお、新しくできた群馬県の八ッ場ダムが台風19号の治水に役立ち、利根川下流域の氾濫を防いだという根拠のない情報がSNSなどで飛び交いました。八ッ場ダムがほとんど下流域の治水に役立っていないことは多くの専門家が指摘しています。その科学的な根拠は水源連や八ッ場あしたの会のHPで確認してください。
八ッ場あしたの会HP yamba-net.org/49211/
水源連HP suigenren.jp/news/2019/10/23/12484/
東京の水連絡会 2019・11・4記