水のニュース4月号
- 2020/04/05
- 16:20

水の月刊ニュース4月号は、2020年3月に起きたニュースをまとめたものです。(ニュースは新聞記事やテレビ報道を要約していますが、記事の趣旨を損なわないようにしています)写真は東京杉並区を流れる善福寺川。
湿地を天然のダムに 豪雨災害受け、環境省が2流域調査へ

(昨年の台風19号で、約1.6億立方メートルの水をため、下流部の被害を軽減した渡良瀬遊水地。2019年10月13日現在の写真)
相次ぐ台風などの豪雨災害を受け、環境省は河川流域の湿地を天然のダムとして活用する方策を検討する。昨年の台風19号で被災した河川から二つの流域を選び2020年度に調査を始める。
東日本を中心に大きな被害があった台風19号では、栃木、群馬など4県にまたがる渡良瀬遊水地が東京ドーム約130杯分(1.6億立方メートル)を貯水し、下流部の被害を軽減した。遊水地は生態系を守るラムサール条約にも登録され、住民の憩いの場となっている。
ラグビーワールドカップが開かれた横浜市の日産スタジアムも、隣接する公園などと一体の多目的遊水地。台風19号では鶴見川の水を受け入れ、下流の水位を30センチ下げる効果があったという。
毎日新聞栃木版 2020年3月6日
漁業者将来見通せず 諫早開門2、3次訴訟敗訴

宝の海の回復を求めた漁業者の願いは届かなかった。諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)の開門を求め、長崎県内3漁協の漁業者が起こした「長崎2、3次訴訟」で長崎地裁は10日、原告の訴えを退けた。最初の提訴からちょうど10年。漁業不振の中、湾内の漁業者は将来を見通せずにいる。
「裁判官には現場を見てほしい」。湾内でノリ養殖を営む瑞穂漁協(長崎県雲仙市)の室田和昭さん(76)は判決後、「農・漁・防災 共存の和解へ」と書かれた旗を手にうつむいた。写真左が室田さん。
室田さんのノリ養殖場は潮受け堤防の南部排水門のすぐそば。赤潮が続くと、ノリの色も落ちて値も下がり、「もうお手上げ」と語るほどの影響が出た。室田さんは、いっしょに働く40代の息子がノリ養殖を続けていけるかが一番の気がかりだ。
「開門を求め続け、子どもにこの漁場を残していきたい」と語った。
朝日新聞長崎版2020年3月11日
海のパンダ?新種、白黒しまの魚 伊豆近くで撮影

( 新種として発表されたパンダゲンロクダイ=鹿児島湾、出羽慎一氏撮影)
鹿児島大学などの研究チームが、静岡県の伊豆半島周辺や鹿児島湾などにすむ、チョウチョウウオの仲間の新種を発見した。白黒しま模様の見た目から、和名を「パンダゲンロクダイ」と名付け、日本魚類学会の英文誌「イクチオロジカル・リサーチ」電子版に発表した。(https://www.doi.org/10.1007/s10228-020-00735-9)
朝日新聞 2020年03月14 日
ドゥテルテ氏、財閥たたき 財閥アヤラは水道事業を売却
フィリピンの財閥に対するドゥテルテ大統領の圧力が強まっている。財閥3位のアヤラは主力の水道事業の経営譲渡を迫られ、テレビ局を持つ財閥8位のロペス・ホールディングスは、5月予定の放送免許の更新が認められない可能性が出てきた。
2022年の大統領選をにらんで財閥を取り込み、自身の後継候補が選挙戦で有利となるよう影響力を高めるのが狙いのようだ。

(写真はマニラ・ウオータ―の給水車)
発端は12年。首都マニラの水道事業を一手に引き受けるマニラ・ウオーターと同業大手がそろって政府に水道料金の引き上げを申請し、それを政府が却下したことに始まった。契約上、値上げは可能だ。不満に思った両社は裁判で争うことを決めた。そして昨年11月、シンガポールの仲裁裁判所は両社の訴えを認め、フィリピン政府に計108億ペソ(約220億円)にのぼる賠償金の支払いを命じた。
しかし、ドゥテルテ氏は司法の判断にも全くひるまなかった。判決直後の昨年12月、大統領府での演説で、そもそも水道事業に関する契約内容は不平等だとし、「あらゆる(財閥の)資産を接収してやる」とすごんでみせた。
恐れたアヤラは、すぐさま賠償請求を放棄すると表明した。
だが、それでも同氏の怒りは収まらない。1月には「契約を結び直さなければ、水道事業を全て取り上げる」と発言。法務省も契約の見直し作業を始めたことを明らかにした。 こうした動きにもはや耐えきれず、アヤラは先月、マニラ・ウオーターの経営権を他財閥に譲渡すると発表し幕引きを自ら図った。
日本経済新聞 2020年3月17日
石木ダム工事差し止め訴訟 原告「反対」強く決意 敗訴判決に司法への不信あらわ

(写真は判決を前にダム建設反対を訴える原告ら)
川棚町で進む石木ダム事業を巡り、水没予定地に暮らす地権者ら601人が県と佐世保市に工事差し止めを求めた訴えを棄却した長崎地裁佐世保支部判決。事業認定取り消しを求めた訴訟の1、2審に続く敗訴に、原告は司法への不信をあらわにし、ダム反対を貫くことを改めて決意した。
判決後に佐世保市であった報告集会には、原告団と支援者ら約100人が参加した。石木ダム対策弁護団の馬奈木昭雄団長は「判断を下した納得いく理由を説明すべきなのに、判決は主文を読み上げただけ」などと批判。一方で、他県でダム事業が中止されたケースを引き合いに、「地元の声の高まりがダムを止める」と語った。
水没予定地の住民で川棚町議の炭谷猛さん(69)は「裁判を続けることで行政にプレッシャーを与え治水、利水の議論に持っていきたい」、石木川まもり隊の松本美智恵代表(68)は「今後も問題を県民に発信して、事業の必要性を問い続けたい」と語った。原告団は控訴を決めている。
毎日新聞長崎版 2020年3月25日
国有林の民間開放にちらつく竹中平蔵氏の影 元補佐官が法改正議論に参加

(写真は国有林法改正について議論した林野庁作成の内部文書)
国有林で最長50年間の伐採権を民間業者に与える改正国有林野管理経営法が、4月に施行される。安倍政権は林業の活性化を掲げるが、国有林の大規模開放による荒廃の懸念も消えていない。
毎日新聞は、林野庁などが2018年末に法改正の詳細を検討した会合の記録文書を、情報公開請求で入手。
辞任した元官房長官補佐官が議論に参加するなどの不可解な構図や、政権内の綱引きが浮かんだ。【杉本修作、寺田剛】
入手した文書は、林野庁が作成した2018年11月26日と12月11日の「福田元補佐官打ち合わせ概要」と12月13日の福田隆之氏からの「電話連絡」。
打ち合わせは内閣官房の会議室で行われ、菅義偉官房長官の補佐官だった福田氏と林野庁職員のやりとりが記されていた。
文書からは、民間開放をできるだけ広げたい竹中・福田両氏と、世論の批判を懸念する林野庁の綱引きも読み取れる。
11月26日の打ち合わせで福田氏がこだわったのは、国有林の伐採権(樹木採取権)を業者に与える期間や規模だ。 林野庁は「10年を基本とし、上限50年」との資料を自民党に提出していた。
福田氏は打ち合わせの冒頭から「大規模なものは当面やらないという話ではない、ということでよいか」と指摘。資本力のある大企業を念頭に、長期・広範囲の民間開放を確実に行うよう、けん制した形だ。
林野庁は「大規模もやるが、最初は未定」とかわしたが、19年2月に閣議決定した法案には「50年以内」とだけ記され、林野庁がこだわった「10年」の2文字はなかった。
12月11日には、公共施設を民間委託するPFI法に沿ったガイドラインの策定を福田氏が要請。林野庁の見解を受けて「竹中会長がOKなのか確認する」と答えた。「次回は年明けに」とスケジュールも主導。
2日後の電話では、竹中氏から「ちゃんとやるんだろうな」と念押しされたことを伝え、「詳細は相談してほしい」と引き続き関与する意向も示していた。
林野庁は改正法が施行される2020年4月以降、伐採権を与える国有林のエリア(樹木採取区)を公表。約3カ月の公告・縦覧を経て業者を公募し、早ければ20年度中に第1号の業者を決める。
毎日新聞2020年3月26日
注)当時、福田元補佐官は週刊誌など一部メディアから水道事業民営化を巡り業者との関係を疑問視され、11月9日に補佐官を辞任していた。それが11月26日、一民間人の福田氏が竹中氏の名代として法改正に関与したことになる。 なおこの改正国有林野管理経営法と水道民営化法は森と川でセットの法案で、さらに改正漁業法を加えて森・川・海を商品化する3点セット法案となっている。(東京の水連絡会)
八ツ場ダム完成 4月1日から本格運用へ

(写真4月1日から本格運用される群馬県長野原町の八ツ場ダム:共同通信社ヘリから)
群馬県長野原町で建設中だった八ツ場(やんば)ダムが31日、完成した。1952年の建設調査着手後、地元の反対運動や、民主党政権による建設中止宣言などを経て68年。既に貯水を始めており、4月1日から本格運用する。
共同通信2020年03月31日
2020・4・5記