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球磨川氾濫 その5~ダム案に住民反発~ 水のニュース別巻

①8月4日Nhkニュース映像 
(濁流にのまれる球磨村の住居。NHKより。市花保氏撮影)

知事の“ダムも選択肢のひとつ”発言に 住民反発 球磨川氾濫その5

蒲島郁夫知事は7月豪雨で球磨川流域が甚大な災害を受けた直後には、
「ダムによらない治水を目指してきたが、費用が多額でできなかった。しかし、ダムによらない治水を極限まで検討する」と語っていました。
それが、ほぼ2ヶ月後の8月25日、国と県による球磨川豪雨検証委員会で国交省(九州地方整備局)が「川辺川ダムがあれば被害は軽減できた」との検証結果を発表すると、閉会後の記者会見で「川辺川ダムは選択のひとつ」と、前言を翻しました。
 当然のことながら、豹変した知事の一言を新聞各紙が一斉に報じると、流域住民の間に衝撃が走ります。
3日後、ダムによらない治水を求めてきた「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」など3つの市民団体が、検証委員会に対する抗議の声をあげます。以下はその記事です。

「ダムありき」県に抗議 市民団体が検証委に住民参加要請
(西日本新聞9月1日)
②書類を提出・市民団体 
(写真は豪雨検証委員会のあり方について県に抗議文を提出する市民団体)
8月31日。 国と県、球磨川流域12市町村による7月豪雨の検証委員会を巡り、熊本県内の市民団体が県庁を訪れ、建設中止となっている川辺川ダムを「選択肢の一つ」とする委員会の姿勢について「ダムありきの検証が流域住民を危険にさらす」と抗議。ダムのリスク面の検証や検証委への住民参加など9項目の「提言」を文書で提出した。
 文書は「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の中島康代表(80)ら3団体の連名。住民不在の検証に懸念を示し、「住民への説明責任と合意形成のプロセスを放棄した検証委の進め方は再び流域に対立と混乱をもたらす」と主張した。
 その上で、7月の豪雨をもたらした線状降水帯について「どの河川、どの支流に水量が集中し、どうピーク流量を算出したのか」といった災害の様相の検証を要請。ダムの構造的なリスクや、地域ごとに異なる水害発生の要因についても検証するよう求めた。
 更に市民団体側は「被災地の声を聞かずに検証ができるのか」「ダムのデメリットも検証しないと市町村長は判断できない」と指摘。(抗議文の全文を巻末のURLから読むことができます)

    相次ぐ流域住民からの批判と抗議を受けて、ほぼ1か月後に蒲島郁夫知事は動き始めます。被災住民の意見を聴くための集会を開き、各市町村を回り始めました。
③蒲島知事 
(意見聴取する蒲島知事。西日本新聞より)
皮切りは農林水産業者の声を聴くことからでした。

漁業者側、ダムの賛否触れず 被災地で意見聴取会
(西日本新聞10月16日)
④漁協・堀川さん。 
(写真は、意見聴取会後、治水の方向性について取材に応じる球磨川漁協の堀川泰注組合長)
10月15日。熊本県の蒲島郁夫知事による被災地の意見聴取会。初回は農林水産関係8団体10人が発言し、「ダム容認」が大半を占めた。
ただ、過去にダムを巡る内部対立を経験した球磨川漁協の堀川泰注組合長は「あまり刺激せずに進めたい」と慎重な発言に終始。国や県の方向性が示された後、意見を集約する考えだ。
 会合では、球磨地域農協など5団体がダム建設を求め、「自然環境に配慮した流水型の穴あきダムの検討を」と踏み込んだ提案もあった。背景にあるのは、ダムの代替案となる「遊水池」への警戒感。優良農地が犠牲となるため「農家の理解は得られない」という。
 一方、堀川組合長氏は「発言を慎重にしないといけない立場」と断った上で、兼務する人吉球磨木材協会長として「森林は『緑のダム』とも言うが、今の山の状況を見ると保水能力はなくなっているのではないか。何らかの治水対策は必要だ」と言及。漁協組合長としては漁業被害を訴えるにとどめた。
 会合には、県たばこ耕作組合▽球磨畜産農協▽球磨酪農協▽人吉球磨地域土地改良区連絡協議会▽球磨地方森林組合連絡協議会も出席した。

このあと、蒲島知事は流域の八代市、球磨村、相良村、人吉市、多良木町を矢継ぎ早に廻り、被災住民の意見聴取をします。
⑤流域の市町村マップ55kb 

「ダム案は拙速だ」知事の意見聴取会 “八代市”と“球磨村”
(西日本新聞10月23日)
⑥千寿園・日経新聞 
(14人が亡くなった球磨村・千寿園。7月4日午前:共同通信ヘリ)
10月22日。蒲島郁夫知事は、甚大な被害が発生した八代市坂本町と球磨村で住民の意見を聞いた。「一日も早く集落に帰りたい」という被災者の思いの実現に向けて「治水の方向性」の判断を急ぎ、「川辺川ダムも選択肢の一つ」とする蒲島氏に対して、この日の会合では「拙速」との声やダムへの拒否反応も相次いだ。
 「代替地があれば早く帰りたい。でも家を建てる場所がない」。坂本町住民自治協議会の蓑田陽一監事は「何とかしてほしい」と訴えた。会合では「生活道路の早期復旧を」「河川を掘削して」などの要望も上がった。
 坂本町で商店を経営してきた本田進さん(86)は「ダムができれば地域は崩壊する」と強調。別の発電用ダムが原因で「川が死んだ」との思いがあるという。
球磨村でヤマメ養殖場を管理する斎藤寛さん(62)も「川辺川ダムで浸水被害を6割減らせる」とする国の検証結果に「拙速で不十分。デメリットも丁寧に説明を」と指摘した。
  
ダムでの治水に態度保留 “相良村”
(西日本新聞10月24日)
⑦―②相良村 
(写真は豪雨災害からの復旧・復興や治水策への要望を述べる住民・23日午前、熊本県相良村)
10月23日。7月豪雨で氾濫した熊本県南部の球磨川流域の治水策を巡り、蒲島郁夫知事は相良村で意見聴取会を開いた。
村は、12年前に蒲島氏が「白紙撤回」した川辺川ダムの建設予定地。かつて「脱ダム」の先陣を切った村には強硬な反対論もあるが、吉松啓一村長は「民意は千差万別」として態度表明を保留している。
約20人が集まった村役場横の体育館。「ダムができれば地域は死ぬ」と強く訴える漁業関係者はいたが、多数を占めたのはダムの是非論ではなく「河道掘削と堤防のかさ上げ」だった。
相良村は12年前、川辺川ダム建設推進で「一枚岩」だったはずの流域12市町村で最初に「反旗」を掲げた。この後、ダム治水の最大の受益地とされる人吉市も反対を表明し、蒲島氏の「白紙撤回」につながった。
村は長年、国や県にダム以外の治水策として河道掘削と堤防のかさ上げを要望。遅々として進まなかったが、蒲島氏はこの日「河道の掘削は、みなさんの希望に添ってちゅうちょなくやる」とあっさり明言した。
3月の村長選でダムに反対した前村長を僅差で破り、脱退していた「川辺川ダム建設促進協議会」に復帰した吉松村長は、こう強調した。
「私は中道を保つ。国、県と条件闘争はしても対立はしない。治水策は知事の判断を待つ」

「川まで奪わないで」ダム反対多数の“人吉市” 
(西日本新聞10月25日)
10月24日。蒲島郁夫知事が球磨川流域で開いている意見聴取会が、人吉市であり、約100人が参加した。豪雨による犠牲者20人、家屋被害3千戸と最大の被災地であり、是非論が再燃している川辺川ダムによる治水の最大受益地とされるが、多くはダムに反対した。
⑧人吉市A 
(写真は毎日新聞より)
「川辺川は宝です」清流への愛情と行政への不信感が浮き彫りになった。
「知事さん、ダムを造らないで」。地元で生まれ育った木本千景(ちひろ)さん(34)は切々と訴えた。川辺川は遊び場であり、アユ漁や川下りができる観光資源であり、古里の原風景。学生だった2008年、ダム建設を「白紙撤回」した蒲島氏のニュースを東京で見て「うれしくて泣いた。だから、ここに戻って子育てし、幸せな生活を送っています」。川遊びする長男(4)の写真を蒲島氏に向けた。
 「多くを失った被災者から川まで奪わないで」。他の参加者の反対意見にも川への深い愛情がにじんだ。
 ダムへの拒否反応も強い。「ヘドロが増えた」「臭い」などとやり玉に挙がったのは球磨川上流の県営市房ダムだ。7月豪雨時には防災効果を発揮したが「今回の水害は市房ダムの放流が原因という声が多い」との意見も出た。
「川辺川ダムが存在すれば人吉市の浸水範囲は6割減った」という国の検証結果についても、複数の市民が「信用できない」と述べた。
 蒲島氏は会合後、報道陣に対し、ダム反対論の多さに関して「不信感の強さを感じた。丁寧に説明すべきだと感じた」と話した。

上球磨3町村、市房ダムに評価と不安
(熊本日日新聞2020年10月31日 )
⑨上流3村 
(治水対策などについて蒲島郁夫知事(手前)に意見を述べる出席者。多良木町)
10月30日。知事は7月豪雨で氾濫した球磨川の治水対策について、上流域の多良木町、湯前町、水上村の住民から意見を聴いた。参加者からは地元の河床掘削を求める声が相次ぎ、県営市房ダム(水上村)の治水効果には評価と不安の声が交錯した。
かつて水害常襲地帯だった多良木町牛島地区の林田忠区長(67)は、国の河床掘削などで「牛島地区は住宅浸水を免れた」と評価。「今回の豪雨で再び土砂が堆積した。掘削を継続してほしい」と要望した。
 県が7月豪雨で同町のピーク時の水位を約90センチ下げたと推定した市房ダムの効果については、ダムの緊急放流を不安視する声も。
湯前小PTA会長の椎葉太さん(49)は「今回、流域で最もひどかった雨が市房ダムの上流域で降った場合の想定を知りたい。どの程度で緊急放流になり、どう被害が広がるのか分からないのは怖い」と口にした。
 3町村は球磨川と川辺川の合流点より上流にあり、大半の参加者は川辺川ダムの是非に言及しなかった。

流域の市町村を廻った蒲島郁夫知事は、年内に治水の方向を示すと語っていますが、どう舵をきるつもりなのでしょうか。
この稿は~その6~に続きます
2020・10・31(文まとめ 山本喜浩)

「第1回球磨川豪雨検証委員会に対する抗議と提言」の全文などが掲載されている「子守唄・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」のhPは、下記URLから。
http://kawabegawa.jp/





 

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プロフィール

Tokyo no Mizu

Author:Tokyo no Mizu
プロフィル

東京都は水道水のほぼ60%を利根川水系・荒川水系に依存しています。
つまり、自給率はほぼ40%。こんな自給率で異常気象や大地震が引き起こす
災害に備えることが出来るのでしょか。
私たちは大変に危うい水行政の元で暮らしています。
これまで東京の河川・地下水の保全と有効利用をめざしてきた市民グループ、
首都圏のダム問題に取り組んできた市民グループらが結束して、
「東京の水連絡会」を設立しました。
私たちは身近な水源を大切にし、都民のための水行政を東京都に求めると同時に、
私たちの力でより良い改革を実践していきます。
東京の水環境を良くしようと考えている皆さま、私たちと共に歩み始めましょう。
2016年9月24日。        
                   
      

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