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球磨川氾濫・その6 ~県知事が変節 国に流水型ダムを要請~  水のニュース別巻 

①パレード 
(11月23日。川辺川ダム建設反対を訴えながら、熊本市街地を行進する抗議集会の参加者)

県知事 流水型の川辺川ダム建設を 国土交通大臣に要請 

熊本県の蒲島知事は川辺川ダム建設容認に大きく舵を切りました。
2020年11月19日、「住民の命を守り、さらには、地域の宝である清流をも守る新たな流水型のダムを国に求めることを表明いたします」と県議会で表明。
そして、その翌日に赤羽一嘉国土交通大臣に面会、流水型川辺川ダムの建設を要請しました。
2008年、川辺川ダム計画の白紙撤回を宣言した蒲島知事です。12年たったこの日、住民への約束を裏切ったことになります。
なぜ翻意したのでしょう?
国交省のお役人に「人の命が大事か、環境が大切か? 知事として人の命を守るのが当然だろう」と執拗に脅かされたからでしょうか。
流域のダム建設推進派の声に押されたのでしょうか?
それとも、12年前からダムによる治水もありだと考えていたのでしょうか?

蒲島郁夫知事は元東大教授という、いわゆる学者知事。
冷静に合理的に考えれば、この7月に熊本県を襲った豪雨は凄まじく、川の上流にダムを造って防げる災害でなかったことは明らかです。
ほぼ9時間たらずの間に、400ミリを超える記録的な雨を降らせた線状降水帯なるものは、地球温暖化がもたらした気象異変のひとつでした。
蒲島知事はなにを根拠にダム容認に翻意したのでしょう。
7月豪雨により球磨川流域で50名の人が命を奪われました。知事として、その責任と重圧のくびきから“流水型ダム”という逃げ道に駆け込んで、身軽になったのでしょうか、胸中は推し測れません。

この19日の蒲島知事の方針転換に対して、3日後の23日、早くも流域住民が熊本市中心街でダム容認に抗議するパレードを展開しました。
また、多くのメディアが知事のダム容認は拙速であると批判しています。
②ダム予定地 
流水型ダムは本当に環境に優しいのか?

多くの批判的な記事のなかから、“流水型ダム”なるものに焦点を絞った「西日本新聞」の記事をまず最初に紹介します。  

【再び建設に向け前進する熊本県の川辺川へのダム計画。蒲島郁夫知事は国に、洪水時だけ貯水する「流水型ダム」(穴あきダム)への転換を求めた。計画見直しなどを含めて完成までには10年以上かかる見通しだ。
 ダムや遊水地などを組み合わせた流域治水は、住民の合意形成が不可欠。乗り越えるべき課題は少なくない。
 川辺川ダムの従来の形態は、平時から水をためる「貯留型」。放流量を調節できるが、下流を遮断し、生態系などへの影響が指摘されている。これに対し、流水型はダム下部の穴から常に水が流れ、土砂は堆積しにくく、上下流を魚類が移動しやすいという。
治水機能のある全国570ダムのうち、流水型は2006年完成の益田川ダム(島根県)など五つ。立野ダム(熊本県)など9基で事業が進む。
③ダムの仕組みイラスト 
  しかし、益田川ダムを巡っては、島根県による06年度の環境調査で、構造物がアユの遡上を 一部阻害していたことが判明。県は「08年の調査でアユは確認され、大きな影響はない」とするが、その後調査はしていない。「アユが減った」という住民の証言もある。
また、「記録的豪雨で山の斜面が崩壊し、大量の土砂や流木が押し寄せれば穴は詰まる。洪水調整機能を失う」という意見がある一方で「技術的に解消でき、問題はない」との見方も…専門家の見解も割れている】(西日本新聞11月20日)

流水型ダムに関して、「熊本日日新聞」の社説は、以下のような指摘もしています。

【先例の乏しい大規模な流水型ダムで、本当に清流を維持できるのか。かつて難航した漁業補償の問題も再燃しかねない。法に基づく環境影響評価(アセスメント)を実施するにも、それなりの時間が必要だ。それらの見通しについて、現時点では十分な説明がなされていない。事業費や工期も不透明で、仮に建設するにしても完成までに10年前後の年月がかかるはずだ。
  そう考えればむしろ、早急に実施できる治水対策の方が重要になる。何よりも来年、再来年といった目前の出水期に備えなければならないからだ】(熊本日日新聞11月20日)



ダム容認を打ち出す前に総合的な検証が必要なのではないか

「日経新聞」の社説では、この時点でのダム容認は拙速であり、総合的な検証が必要ではないかと手厳しく蒲島知事を批判しています。

【拙速の印象が拭えない判断である。7月豪雨で大きな被害を出した熊本県の球磨川流域の治水対策について、蒲島郁夫知事が「ダムによらない治水」をあきらめ、かつて中止した川辺川ダムの建設も検討する考えを表明した。
        
④蒲島知事・県議会 
        (写真は川辺川ダムの建設容認を表明した熊本県の蒲島知事 19日の熊本県議会)
  一日も早い対策を求める地元の気持ちはわかる。だが、被災の記憶が覚めやらぬうちに長期にわたる対策の是非を判断すると、将来に禍根を残すというのが多くの災害で得た教訓だ。人口減少などを十分に考慮できないためだ。川辺川ダムの是非は総合的に検証したうえで結論を出すべきである。
    知事は環境への配慮から下部に穴を開けて川を残す流水型ダムを検討するという。2008 年に国土交通省が提案したもので、当時でも10年近い工期と1200億円の追加費用を必要とし、費用対効果は建設が適当とされる1を僅かに上回る1.23とされた。
八ツ場ダムの例をみても、工期や費用はさらに膨らむ公算が大きい。国は今回、ダムが有れば浸水は6割減ると試算した。推進したい国の試算は過大になりがちだ。
    一方、ダム中止を受けて検討した複数の代替策は、事業費が最大1兆円を超え、工期も50年以上とされたことから具体化できずにいる。これらの試算も妥当なのか、改めて詳細に検証すべきだ。
 未曽有の水害が相次ぐ中、国は流域治水という考え方を打ち出している。住宅の移転や避難の迅速化などハード、ソフトの対策を総動員し、住民や企業にも防災意識の徹底を求める取り組みだ】。
(日本経済新聞11月19日) 

球磨川流域の市民3団体が、知事に抗議文を提出。

3市民団体の抗議文は、この11月19日の知事のダム容認表明のあることを見越して11月13日に提出されました。
その模様を「毎日新聞熊本版」が以下のように伝えています。

【7月の九州豪雨で氾濫した球磨川の治水対策として熊本県が川辺川ダム建設を容認する方針を固めたことを受け、熊本市の「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」(中島康代表)など3団体は13日、ダム建設に反対する抗議文を県に提出した。
      
⑤手渡す会の木本さん。 

(写真は、ダムがあれば浸水面積を6割減らせた」という国の試算は信じられない、と訴える「清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会」の木本雅己事務局長・右端)
3団体は「流域住民はダム建設を求めていない。住民の望まないものを押し付けることは、再び流域に対立と混乱をもたらすだけだ」と指摘。
ダムを建設すると球磨川は完全に『死の川』となる。球磨川、川辺川の清流なくして、流域の復興はあり得ない」と訴えた】(毎日新聞熊本版11月14日)
 
ダムを建設すると「死の川」になるという言葉がピンとこない方が多いかと思います。
ちょっと乱暴に言葉を加えますと、ダムによって川は自然氾濫を起こせなくなり、淵や瀬に溜まった砂を押し流す力を失います。激流だった荒瀬はチャラチャラとした流れに、深い淵は浅い淀みにと姿を変えていきます。活性を欠いた川は次第に直線化、上流の水を単に下流に運ぶだけの平坦な水路になることを余儀なくされます。同時に、それまであった川の生態系は著しく損なわれていきます。
ダムはジワジワと川を殺していくのです。

上記の3市民団体に続き、全国のダム建設問題等を検証している水源開発問題全国連絡会「水源連」も、蒲島郁夫知事に意見書を提出しています。
水源連の意見書は、今回の大氾濫の主因は国土交通省が本来実施すべき治水対策を怠ってきたことにある。球磨川の自然に大きなダメージを与える川辺川ダム計画を再浮上させてはならないと前置きをして、
以下の2つの提言をしています。
① 河床を掘り下げて川の水位を下げる対策を進めること。
国交省が掘削に応じない理由とする「河床を掘削すると軟岩が露出して環境上の問題が生じる」というのは、根拠が希薄な言い逃れで、あきらかにダム建設を進めるための意図的なサボタージュである。
② 今回の球磨川水害は、小川(球磨村で合流)などの支流の氾濫による影響が大きくて、川辺川ダムがあっても対応できなかったこと。球磨川本線だけでなく支川の治水対策が重要であること。

この水源連の意見書は、冷静で合理的な検証結果を踏まえての提言です。以下のURLからアクセスして、是非とも全文をお読みください。
http://suigenren.jp/news/2020/11/17/13859/

この稿は~その7~に続きます。

2020年11月24日記(文まとめ 山本喜浩)

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Tokyo no Mizu

Author:Tokyo no Mizu
プロフィル

東京都は水道水のほぼ60%を利根川水系・荒川水系に依存しています。
つまり、自給率はほぼ40%。こんな自給率で異常気象や大地震が引き起こす
災害に備えることが出来るのでしょか。
私たちは大変に危うい水行政の元で暮らしています。
これまで東京の河川・地下水の保全と有効利用をめざしてきた市民グループ、
首都圏のダム問題に取り組んできた市民グループらが結束して、
「東京の水連絡会」を設立しました。
私たちは身近な水源を大切にし、都民のための水行政を東京都に求めると同時に、
私たちの力でより良い改革を実践していきます。
東京の水環境を良くしようと考えている皆さま、私たちと共に歩み始めましょう。
2016年9月24日。        
                   
      

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